○はじめに
『コンピュータ』と聞いて、何を思い浮かべますか?
おそらく『金属部品を含んだ無機質な物体』を思い浮かべる方がほとんどではないでしょうか?
しかし、一昔前まで、この言葉は、『計算する人』という意味で用いられていました。
その後、1900年代に入ると、真空管という電子部品が発達したことで、現在のコンピュータに近い電子式のコンピュータが作られるようになりました。
そして1937年に、MITの学生であったクロード・シャノン(Claude Elwood Shannon、1916年-2001年)が、修士論文において「継電器とスイッチ回路の記号論的解析(A Symbolic Analysis of Relay and Switching Circuits)」という論文を書き、電子回路にてブール代数を扱うことができること、すなわち論理演算がスイッチ回路で実行できることを証明しました。これによって、コンピュータが、現在のような高速の論理演算機として活躍することが可能となりました。
そして現在、私たちは、あらゆる場面において、コンピュータの恩恵を受けていると言っても過言ではないでしょう。その位、今やコンピュータは人々の生活の中に浸透し、今後さらにその深さを増すことになるでしょう。
コンピュータの普及期には使い方を身につけることが急務でしたが、普及を遂げた今、これからは、コンピュータというブラックボックスがどう作られ、さらにどう活用できるのか、その背景にある考え方や理論を学ぶことこそ重要であると考えます。
本書は、『2進法』と呼ばれる数字記法についての問題集です。これは、コンピュータの仕組みを考える上での最も基本的な事項です。
「いまさら2進数?」――そんな声が聞こえてきそうです。
確かに2進数を知らなくても、コンピュータを使う上で困ることはありません。しかし、2進数を知ることで、より深くコンピュータを理解することができるでしょう。
「0と1だけを使った記数法!」――と、即答される方もいるでしょう。
それでは質問です。2進数で負の数を表すにはどうしたらよいでしょうか。小数についてはどうでしょう。コンピュータはこれらの値を、2進数でどのように演算しているのかをすぐに答えられますか?
実は、コンピュータでは、四則演算は、足し算のみで行われているのです。
このことは、日ごろ意識することなく10進数で四則演算を行っている私たちにとって、興味深いものがあります。
是非とも、本書により、コンピュータへの理解を深めるだけではなく、“数”というものを改めて考えるきっかけとなれば幸いです。
○本書の利用法
本書は3部から成り立っています。
まず、第1部の基礎知識編では、2進数の基本を学びます。
もちろん、「2進数という言葉は知っているが、よく分からない」という方にも理解してもらえるように、“ゼロ”から説明していきますので、ご心配なく。分からない人も、分かったつもりでいる人も、この機会に2進数をマスターしましょう。
第2部は、問題編です。
各大問の内訳は、下記の通りです。
・大問1. ( 全 110 問 )
10進数から2進数への基数変換
大問5から大問9の問題中の基数変換と同じものなので、慣れてきたら次の大問へと進むことをお勧めします。
・大問2. ( 全 107 問 )
2進数から10進数への基数変換
大問5から大問8の解答と同じものなので、慣れてきたら次の大問へと進むことをお勧めします。そして、大問5から大問8の各問実施時に答えの確認用に用いるのが良いと思います。
大問3から大問9は、小問5つずつセットになっており、それぞれテーマ別になっています。そして、それぞれのセットの最後の問題がそのテーマで最も難しい問題となっています。
さらに、各大問の最後のセットは、総合問題となっています。
従って、ある程度自信のある読者は、各セットの最後の問題から解いてみて、間違ったらそのセットを始めから解いてみるのが良いでしょう。
・大問3. ( 全 15 問 )
10進数の小数から2進数の小数への基数変換
・大問4. ( 全 15 問 )
2進数の小数から10進数の小数への基数変換
※ 先の大問3の逆演算
・大問5. ( 全 70 問 )
2進数の加算
・大問6. ( 全 40 問 )
2進数の乗算
・大問7. ( 全 70 問 )
2進数の減算
・大問8. ( 全 30 問 )
2進数の除数
・大問9. ( 全 35 問 )
符号付2進数を用いた減算
・大問10. ( 全 8 問 )
2進数に関する応用問題
資格試験向き
第3部は、解答編です。
○あとがき
2進数が織りなす世界、いかがだったでしょうか?
同じような世界が、8進数でも、16進数でも、それどころかどんな進数でも紡がれています。
本書を終えた読者の方々は、是非ともその扉をたたき、数の理論の深遠な世界へと足を進めてみて下さい。
さて、本書は、これから続く『情報処理』に関する問題集の一つとして執筆しました。この分野は、新しい分野である為なのか、初学者が理解を深める為の問題集というものが極めて少ないというのが現状です。
興味を持って、勉強しようと思ったら、いきなり難しい本しかない。だから、諦める。
私が目指すのは、興味を持った人が、そのままの熱意で、勉強が出来る本です。是非ともこのシリーズがその一助となれば、と願っています。
“数学”は“数が苦”であるという昨今だからこそ、数の理論を楽しむ、例えば“数楽”という思想が必要なのではないかと。そして、願わくば、いつの日か、『 今日は、疲れたから、数楽でもするか 』というのが、常識となるような世の中を目指して、明日も教鞭を執っています。
2016年11月23日
大嶌 彰昇
○著者紹介
大嶌 彰昇 ( おおしま あきと )
東京理科大学理学部第一部応用数学学科卒業。
同大学大学院理学研究科数学専攻修士課程修了。
同大学院理学研究科数学専攻博士課程修了。
博士(理学)。専門分野は、グラフ理論。
福岡県出身。趣味は、研究・ワイン。
場所を問わず研究を行うのだが、特に電車の中で、宙に数式を描く姿は、さながら年末の大規模コーラスのマエストロのようだと自負している。ただ、入浴中も研究に没頭する為、湯のぼせと水難が悩みの種である。
現在、様々な大学で教鞭を執っているが、“なるべく専門用語を使わない授業”を心掛け、初学者でも興味を持てる授業を模索している。
一方、文部科学省「理数学生応援プロジェクト」委託事業「スーパーサイエンティスト育成プログラム」特別講義「折り紙 ~1枚の紙が織りなす世界~」を東京理科大学(2009年10月)にて講演する等、次世代の研究者養成にも余念がない。
おもな著書として、「数学小辞典 第2版」(共立出版)において執筆協力、「情報処理学会 教科書(IT Text)シリーズ 離散数学」(オーム社)において共同執筆等を行う。
『コンピュータ』と聞いて、何を思い浮かべますか?
おそらく『金属部品を含んだ無機質な物体』を思い浮かべる方がほとんどではないでしょうか?
しかし、一昔前まで、この言葉は、『計算する人』という意味で用いられていました。
その後、1900年代に入ると、真空管という電子部品が発達したことで、現在のコンピュータに近い電子式のコンピュータが作られるようになりました。
そして1937年に、MITの学生であったクロード・シャノン(Claude Elwood Shannon、1916年-2001年)が、修士論文において「継電器とスイッチ回路の記号論的解析(A Symbolic Analysis of Relay and Switching Circuits)」という論文を書き、電子回路にてブール代数を扱うことができること、すなわち論理演算がスイッチ回路で実行できることを証明しました。これによって、コンピュータが、現在のような高速の論理演算機として活躍することが可能となりました。
そして現在、私たちは、あらゆる場面において、コンピュータの恩恵を受けていると言っても過言ではないでしょう。その位、今やコンピュータは人々の生活の中に浸透し、今後さらにその深さを増すことになるでしょう。
コンピュータの普及期には使い方を身につけることが急務でしたが、普及を遂げた今、これからは、コンピュータというブラックボックスがどう作られ、さらにどう活用できるのか、その背景にある考え方や理論を学ぶことこそ重要であると考えます。
本書は、『2進法』と呼ばれる数字記法についての問題集です。これは、コンピュータの仕組みを考える上での最も基本的な事項です。
「いまさら2進数?」――そんな声が聞こえてきそうです。
確かに2進数を知らなくても、コンピュータを使う上で困ることはありません。しかし、2進数を知ることで、より深くコンピュータを理解することができるでしょう。
「0と1だけを使った記数法!」――と、即答される方もいるでしょう。
それでは質問です。2進数で負の数を表すにはどうしたらよいでしょうか。小数についてはどうでしょう。コンピュータはこれらの値を、2進数でどのように演算しているのかをすぐに答えられますか?
実は、コンピュータでは、四則演算は、足し算のみで行われているのです。
このことは、日ごろ意識することなく10進数で四則演算を行っている私たちにとって、興味深いものがあります。
是非とも、本書により、コンピュータへの理解を深めるだけではなく、“数”というものを改めて考えるきっかけとなれば幸いです。
○本書の利用法
本書は3部から成り立っています。
まず、第1部の基礎知識編では、2進数の基本を学びます。
もちろん、「2進数という言葉は知っているが、よく分からない」という方にも理解してもらえるように、“ゼロ”から説明していきますので、ご心配なく。分からない人も、分かったつもりでいる人も、この機会に2進数をマスターしましょう。
第2部は、問題編です。
各大問の内訳は、下記の通りです。
・大問1. ( 全 110 問 )
10進数から2進数への基数変換
大問5から大問9の問題中の基数変換と同じものなので、慣れてきたら次の大問へと進むことをお勧めします。
・大問2. ( 全 107 問 )
2進数から10進数への基数変換
大問5から大問8の解答と同じものなので、慣れてきたら次の大問へと進むことをお勧めします。そして、大問5から大問8の各問実施時に答えの確認用に用いるのが良いと思います。
大問3から大問9は、小問5つずつセットになっており、それぞれテーマ別になっています。そして、それぞれのセットの最後の問題がそのテーマで最も難しい問題となっています。
さらに、各大問の最後のセットは、総合問題となっています。
従って、ある程度自信のある読者は、各セットの最後の問題から解いてみて、間違ったらそのセットを始めから解いてみるのが良いでしょう。
・大問3. ( 全 15 問 )
10進数の小数から2進数の小数への基数変換
・大問4. ( 全 15 問 )
2進数の小数から10進数の小数への基数変換
※ 先の大問3の逆演算
・大問5. ( 全 70 問 )
2進数の加算
・大問6. ( 全 40 問 )
2進数の乗算
・大問7. ( 全 70 問 )
2進数の減算
・大問8. ( 全 30 問 )
2進数の除数
・大問9. ( 全 35 問 )
符号付2進数を用いた減算
・大問10. ( 全 8 問 )
2進数に関する応用問題
資格試験向き
第3部は、解答編です。
○あとがき
2進数が織りなす世界、いかがだったでしょうか?
同じような世界が、8進数でも、16進数でも、それどころかどんな進数でも紡がれています。
本書を終えた読者の方々は、是非ともその扉をたたき、数の理論の深遠な世界へと足を進めてみて下さい。
さて、本書は、これから続く『情報処理』に関する問題集の一つとして執筆しました。この分野は、新しい分野である為なのか、初学者が理解を深める為の問題集というものが極めて少ないというのが現状です。
興味を持って、勉強しようと思ったら、いきなり難しい本しかない。だから、諦める。
私が目指すのは、興味を持った人が、そのままの熱意で、勉強が出来る本です。是非ともこのシリーズがその一助となれば、と願っています。
“数学”は“数が苦”であるという昨今だからこそ、数の理論を楽しむ、例えば“数楽”という思想が必要なのではないかと。そして、願わくば、いつの日か、『 今日は、疲れたから、数楽でもするか 』というのが、常識となるような世の中を目指して、明日も教鞭を執っています。
2016年11月23日
大嶌 彰昇
○著者紹介
大嶌 彰昇 ( おおしま あきと )
東京理科大学理学部第一部応用数学学科卒業。
同大学大学院理学研究科数学専攻修士課程修了。
同大学院理学研究科数学専攻博士課程修了。
博士(理学)。専門分野は、グラフ理論。
福岡県出身。趣味は、研究・ワイン。
場所を問わず研究を行うのだが、特に電車の中で、宙に数式を描く姿は、さながら年末の大規模コーラスのマエストロのようだと自負している。ただ、入浴中も研究に没頭する為、湯のぼせと水難が悩みの種である。
現在、様々な大学で教鞭を執っているが、“なるべく専門用語を使わない授業”を心掛け、初学者でも興味を持てる授業を模索している。
一方、文部科学省「理数学生応援プロジェクト」委託事業「スーパーサイエンティスト育成プログラム」特別講義「折り紙 ~1枚の紙が織りなす世界~」を東京理科大学(2009年10月)にて講演する等、次世代の研究者養成にも余念がない。
おもな著書として、「数学小辞典 第2版」(共立出版)において執筆協力、「情報処理学会 教科書(IT Text)シリーズ 離散数学」(オーム社)において共同執筆等を行う。