(あとがきより)
タイトルは『鯨座』とした。集中鯨座を詠んだ句が三句。そのどれがというのではなく、そうして折々に心を寄せた鯨座に捧げたものである。
この十年、私はがらんとした鯨座のような領域に、がらんとした鯨座のような心でいた。鯨座はまた、もう一つのタイトル候補であった「空地」によく似ている場所でもあった。三十年近く前に、そんな空地を双眼鏡で眺めて意外な星数に驚き、宇宙とはどんなところか、とふらふら迷い込んだ場所でもあった。
空地に佇む空人。空人の空情。
俳句はいい。
鯨座はいい。
想像力の翔ける広い空ががらんとあれば、小人もまた鳥人になる。虚空の真実を啄むことも出来る。
総ルビの鏡花一巻散るさくら
風鈴を吊せば風が客となる
世にあれど独り小春の影法師
心根も大根も干して甘くせり
道草も霞も食ふがよろしかろ
野遊や花も鳥もがブギウギと
梔子や朝は一重にひらくもの
凩にぶん殴られしをとこかな
空風のどこに答があるのやら
のら猫に覗かれてゐる冬籠
たらららら春に穴あく啄木鳥
新じやがの小惑星といふ風味
雲焼けば油したたる大暑かな
蝉時雨ヨガのポーズをとる女
界隈の風を引き連れ鬼やんま
地団駄の上手なこども冬夕焼
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