「さっき、蠍に刺される夢を見た。指の先にドン!って突き刺さった。鈍く重くて、痛くて、毒が回って、動けなくなって、死んで、腐って、黴びて、あたしの体はただの物になった。物になったあたしが、小さな四角い箱の中に入れられて、誰かが、それを操り人形みたいに動かすの。動かしたり、喋らせたりするの。どうあがいても、ほんとうに、あたしは死んでいるのに」
愛しあう女がふたりで暮らしている、立方体の空間。ふたりは同時に泣き出す。轟々と大声で泣く。抱き合って泣く。涙が涸れるまで、泣く。まるで水の中にいる時のような、冷たいやさしさに満ち溢れた世界。彼女達の世界。
2005年に京都で上演された二人芝居の戯曲作品。
(上演時間70分)
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