これからおれが書こうとしているのは、星にまつわる物語だ。
ひとは誰でも身体のなかに、星を抱えて生まれてくるって話。
その星の扱いで人生の景色が大きく変わってしまうという話。
と言って、宗教とか観念とか哲学とか思想とか、そういう辛気臭いことを語るつもりはまったくない。
実際おれに起こって、おれの人生を根底から変えたいくつかの事実だけを書いていく。
どう変えたかって?
それはこの本を読み終えたら、あんた自身で考えてくれ。
ただひとつ言えるのは、
おれはいま幸せってこと。
【プロローグ】
やりたいことやって、金を稼ぎたい。
おれが求めたのは、これだけだ。
高望みって思うかい?
おれに言わせてもらえば、ささやかな夢。
やりたいことと言ったって、単独でチョモランマに登頂したいとか、
人類に先駆けてゴールドバッハの予想を証明したいとか、
会員数7桁の組織を主催したいとか、そんな大袈裟なものじゃなく、
ただ自分のセンスと才能を活かして、おれらしく生きていきたいってそれだけだし、
金持ちって言ったって、いつも財布に10万円入れてられて、
街で値段を見ずに買い物が出来れば、それで十分に幸せってレベルだ。
これくらいなら望んだって贅沢じゃないだろう?
自分を活かして、金を稼ぐ。自分らしく生きて、金持ちになる。
できない話じゃないだろう?
ちょっと巷を見てみろよ。
心からたのしめることに打ち込めば金はあとからついてくるって、
溢れんばかりの本やセミナーが背中を押してくれてるじゃないか。
あきらめずに頑張ればどんな夢でも叶うって、
若くして金を掴んだ成功者があちらこちらで話してるじゃないか。
だったらやったもん勝ち。
おれは、やるよ。
おれのやりたい、大好きなことにのめり込む。
自分を信じて頑張れば、金も入ってくるし、望んだ生活を手にできるはずだ。
おれ、そう信じてさ、やり続けたんだ。
自信があった。
誰よりも情熱を持っていたし、誰よりも考えたし、誰よりも長時間働いた。
幾度もチャンスを作った。一時的になら大金掴んだことだってある。
でも。最後には全部なくなるんだ。
金も実績も、彼女も相棒も全部。
もちろん、あきらめなかったさ。
うまくいかないのは、自分の想いが足りないからだって、さらに想いに没頭した。
あきらめずに頑張れば、いつかやりたいことで金が稼げる、おれらしく成功できるって、
どこまでも信じて、どんなに苦しくても踏ん張った。
で?
どうなった、おれ?
待っていたのは謀略と裏切り、借りていない借金と雪崩式にデカクなる返済額……
これで気づかなかったら、おれはマヌケを通り越す。
結局世の中、自分らしく貧乏に生きるか、自分を殺して金儲けるか、どちらかなんだ。
これが世の中。これがリアル。やりたいことで金持ちになるなんて、幻想だよ、幻想。
行けども着かない桃源郷さ。
だけど、おれはまだ疑ってる。
おれ以外のヤツは好きなことやって金持ちになってるんじゃないか、って。
だとしたら、どうしてだ?
どうしておれだけ成功しないんだ?
おれの何が足りない?
成功したヤツとの差はなんだ?
センス、才能、能力、情熱、気合い、魂、粘り腰。全部負けてない自信がある。
だとしたら、差はなんなんだ?
あ。
ああ。
あああ。
ひょっとしたら。
あの電話が、悪かったのかもしれない。
おれのその後の人生を方向づけた、二十一歳の秋の夜の、あの電話が……
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