もう10年近く前になるが、2006年に私は『英語になった日本語』を春風社より出版した。ありがたいことに広く読まれ絶版となった。そこで、内容を多少変え、アマゾンより電子書籍として出版することにした。電子版であることも考慮し、本版において変更した点や改善した点を列挙したい。
・原書の巻末にあった多少学問的な章を割愛した。同時に、英語になった日本語の索引も削除した。
・写真を多数入れた。ほぼ50枚にも及ぶ。これによって、内容が多少とも理解しやすくなったと思う。
・10年以上も前に書かれたので、記述をいくぶん新しくした。
この20年余り私が進めている研究は、2つの言語の接触の問題であった。その中心は2カ国語辞典で、これは2つの言語が接触し葛藤する一つの姿である。もう一つ私が取り上げてきた言語接触は、外来語・借用語である。言い換えれば、Japlish, Janglish の問題であり、最近みたテキストのタイトルでいうと Englanese の問題である。特に、日本語語源の語彙で英語に借用され利用されてきた語の歴史を研究している。その基礎調査はほぼ完了し、2003年に『英語のなかの日本語語彙-英語と日本文化の出会い-』を出版することができた。そして、念願だった辞書A Historical Dictionary of Japanese Words Used in English (Revised and Corrected Edition. Tokyo: Texnai) を2014年に世に送ることができた。これによってオックスフォード出版局は、私をOED の「英語に入った日本語」の分野において大いに貢献した人物と認定してくれた。
この研究の過程で、日本語語彙の数奇な歴史に触れることができた。また、このような研究をするのでなければ出会うことのなかったような日本(文化)や日本語にもお目にかかることができた。そこで生まれたのが本書である。ここで、それらの語彙を取り上げ、それらの語の歴史を語りたい。このため、本書は学問的解説を目指すものではなく、一学者の随筆として読んでいただきたい。このような事情で、私自身の英語教師としての履歴を語ることにもなった。
1 最近、英語に入った日本語
1・1 野球はベースボールではない
1・2 「オタク」も英語?
1・3 「メトロク」はロンドンで知らない人がいない日本語
2 あなたはどれだけ日本語がわかりますか
2・1 SODの日本語
2・2 「ジュウドウ」と同じころ借用された「ツナミ」
3 商標や商品名
3・1 「サントリー」と「キリン」の競争
3・2 「ウォークマン」と「ニンテンドー」
3・3 「ゴジラ」が海を渡る
4 経済関係のことば
4・1 トヨタ方式
4・2 日本経済の体質
5 本物の英語になった和製英語
5・1 日本人の作った英語
5・2 本物の英語になった和製英語
6 省略語や混種語で英語に入ったことば
6・1 ハイカラと蛮カラ
6・2 「エロダクション」と「セクハラ」
6・3 「ザイテク」と「カラオケ」
7 里帰りした英単語 (beddo, shock, chop)
7・1 力道山の空手チョップ
7・2 ベッドとショック
8 日常生活のことば
8・1 包んで結んで折る
8・2 「イチョー」と「ギンナン」
8・3 海外旅行のお供は梅干し
8・4 柿の品種
8・5 「ルマキ」のレシピを教えます
8・6 「ラマナス」って何ですか
8・7 「ティー」にしますか、「チャ」にしますか
8・8 英語と日本語のチャンポン(shiitake-mushroomと koi carp と shiatsu-massage)
8・9 「ゴ」と「ゴバン」
8・10 「クルマ」は「ノリモノ」の一種ではない
9 外国との接触の歴史
9・1 坊主のヨーロッパ旅行
9・2 醤油の輸出
9・3 吉原で遊んだ欧米人
9・4 腹切りに嘔吐したフランス人
9・5 「ジャパン」と「ニッポン」
9・6 英語のなかの沖縄
9・7 英語のなかの蝦夷
9・8 アメリカ社会の2世、3世
9・9 第2次世界大戦時に英語に入った日本語
9・10 日本人に解らない日本語 (hooch, hancho, mousmee)
10 日本の社会
10・1 「ホーボー」歩き回ってみませんか
10・2 「コーガイ」「イタイ・イタイ」「ユショー」
10・3 日本の地名で英語になったことば
10・4 地方の港から輸出された物品
10・5 日本の人名で英語になったことば
10・6 日本人にも日本語語源かわかりにくいことば
11 日本の伝統文化
11・1 平仮名と片仮名
11・2 日本の武道に関することば
11・3 生け花と茶の湯
11・4 禅に関することば
11・5 「カミノミチ」「シントー」
11・6 日本工芸 蒔絵
11・7 日本の陶磁器
11・8 日本の刀剣に関する専門語
11・9 東洋の美意識
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